中国の長江以南に分布するナマズで、
日本のマナマズS.asotusやビワコオオナマズS.biwaensisと同じナマズ属の一種です。
このナマズ、熱帯魚通販サイトなどを見ますと中国で最大とか、3mを超すとか書いてあります。
学名もほとんどがS.soldatoviと書いてあります。
そんな巨大鯰ですから一度飼ってみようと
まだ成長しそうなツヤの良い入荷間もない太った幼魚を購入して、
3年間ほど飼っていましたが、50㎝を過ぎるころから急に
その成長速度が鈍ってきました(その後ショップに引き取ってもらいました)。
はじめてのアクアリウム:全記事一覧はこちら
Silurus属を総括した研究者は日本人
本種を含めた世界のナマズ属は日本人によって研究報告がなされました
(世界各地の博物館にある標本を調べ上げる必要があるため、
このような研究は日本では珍しいのです)。
著者は九州大学の小早川みどりさん、
邦題は「タイ及びビルマ産の1新種を含むナマズ属魚類の分類学的再検討学名」で
日本魚類学会から1989年に出版されていますし、
オープンアクセスなので会員でなくても全文閲覧は可能です。
その中で本種の学名はSilurus meridionalisとあり、
同物異名(シノニム)でS.soldatovi meridionalisとなっています。
つまり、S. meridionalisは正当な名前で、S.soldatovi meridionalisは無効な名前となります。
ややこしいのはアムール川にいる南方大口ナマズではないナマズ属でS.soldatoviという別種がいます
(中国では東北大口ナマズと呼ばれているようです)。
要するに先述の熱帯魚通販サイトは学名を誤って表記している可能性が高いということです。
本当に2.5m?
この誤情報の元になったのが江島(2002)の
「世界のナマズ(マリン企画)」ではないかなと思っています。
本書には南方大口ナマズの説明に東北大口ナマズの学名が記してあり、
「大きさ2.5m・・・シベリアから中国にかけて分布する大型種…中国最大のナマズである。」
としてあります。
先の小早川論文には本種は1m以上とあり、
上海自然博物館(1982)「中国淡水魚原色図集」にはメスは体長700㎜で性成熟するとあり、
丁瑞華(1994)「四川魚類誌」には5歳魚で74から102㎝とあります。
さらに、世界の魚の基礎情報を発信しているFISH BASEというサイトでは
本種の最大記録で2006年に150㎝の個体を掲載しています。
要するにどこにも2mとか3mは書いていないのです。
ちなみに東北大口ナマズも1m以上とあります。
ヨーロッパオオナマズでさえ、ほとんどが1.3から1.6mくらいで2mを超える個体は希とあります。
江島(2002)が何を参考に述べたかわかりませんが、
ヨーロッパオオナマズの大きさと間違え、分布は東北大口ナマズのそれと間違えたのではないかなと。
それが検証されずに拡散してしまったのではないでしょうか。
私の短い飼育経験からもまあせいぜい1m超えるくらいだろうという気がしています。
近似種の見分け方
本種は口の後端が目の位置より後ろにあることが特徴です。
簡単に言えば他種に比べ口が裂けているというところでしょうか。
しかし、私が飼った個体はそこまで極端なことはありませんでした。
小早川論文では、本種の胸鰭の前縁が小粒が散在するのに対し、
マナマズは鋸歯状になっていることで区別されるとあります。
また本種は頭長が体長の4倍未満、東北大口ナマズの頭長は体長の4倍以上。
つまり本種は東北大口ナマズくらべて頭が小さいということです。
放流は絶対ダメ
最終的に120㎝水槽くらいは必要ですが、本種の飼い方はいたって簡単。
小さいうちは冷凍赤虫など与え、
大きくなれば肉食魚なので生きた金魚などを与えておればいつの間にか食べています。
ある程度飼育に慣れてきたらしばらく絶食にさせて
少しずつ肉食魚用の配合飼料に移行していけばエサ代も極力抑えることが出来ます。
慣れたら錦鯉のエサでもいけるでしょう。水温も加温の必要もなく、
日本の季節に合わせていけばよいと思います。
ただし、そういう温度耐性が広い本種は野外に放流すれば在来の魚を食べて減少させ、
確実に生き延び、さらに繁殖、最悪の場合、
国内産の他種と交雑の可能性もあると思いますので絶対に責任を持って飼うようにしましょう。
個人的には本種もヨーロッパオオナマズ同様に規制されてもしようがないとは思います。
(写真引用元:wikipediaS.soldatovi)