金魚愛好家と、日本産淡水魚マニアの間で独自のポジションを築いている鉄魚。
天然記念物にもなっている、知る人ぞ知る鉄魚の世界へご案内しましょう。
はじめてのアクアリウム:全記事一覧はこちら
鉄魚とは
鉄魚(てつぎょ)は宮城県の魚取(ゆとり)沼に生息する天然記念物です。
一見、フナのようですが、尾びれをはじめ各ひれが優雅に長く伸びます。
成長につれ鉄のような銀白色から、赤や白、
時には青へ変化することもあるのがフナとの大きな違いです。
赤味がかった黒にも変わるところは、まるで鉄が錆びたようです。
どう色変わりするかは、育ててみないと分かりません。
鉄魚は新種のフナ?
フナの突然変異で、色素が抜けて真っ赤な体色になったものを「ヒブナ」と呼びます。
これを人の手で改良していったのが金魚です。
鉄魚とヒブナの大きな違いは、長く伸びたひれ。
そのため、ヒブナとはまた違うフナの変種だと考えられてきました。
人為的な改良が加えられていないにもかかわらず、
長いひれを持ち、様々な体色に変化する鉄魚はたいへん珍しがられ、
養殖したものでも高額で取引されるようになったのです。
遺伝子解析で分かったルーツ
最新の研究によれば、鉄魚は金魚の一品種である琉金(リュウキン)と
フナが自然下で偶然に交雑、それが固定されたものそう。
つまりフナの新種ではなく、金魚とのハイブリッドだったのです。
ただし、これにはまだ異論もあります。
人間が意図的に交雑させたものでないことが重要だったので、鉄魚に対する評価も変わりませんでした。
鉄魚は変化を楽しむ観賞魚
鉄魚の魅力は、どんな色に変わるか分からないところ。
ひれも金魚のコメットに似たものから、
より厚みがあり幅の広い熱帯魚のショーベタに似たものまで、系統によって差があります。
らんちゅうなどの金魚、あるいはアジアアロワナ、
フラワーホーンのように幼魚のうちに素質を見抜き、丁寧に育てる愉しみがあるのです。
現在は魚取沼意外にも様々な系統の鉄魚が出回るようになりました。
金魚と意図的に交配させることで体色の変化を出やすくしたものもあります。
金魚とのハイブリッドについては異論もありますが、
手頃な値段で鉄魚を購入することができるようになったのは事実です。
鉄魚の飼育情報
○水槽
遊泳力があり体長も15cmを超えるので、60cm以上の水槽でゆったり飼育しましょう。
品種改良の進んだ金魚に比べ長生きなので、変化を楽しみながらじっくり付き合いたいものです。
ろ過器は上部フィルターを中心に、サイズや数に合わせてチョイスしてください。
○水質
品種によっては「青水」を用意したりと、
飼育水に気をつかう金魚が多い中、鉄魚は中性付近で育てられます。
ただし金魚より塩素に弱い傾向があるので、カルキ抜きはしっかり行いましょう。
低温に強いのが特徴ですが、消化不良などを予防するため冬は15度以上に加温します。
金魚用の固定式低温ヒーターで大丈夫です。
○底砂
特長である長いひれを傷めないよう、ベアタンクで飼育するのが無難です。
特にとがった流木はケガの原因になります。
(餌)
金魚や熱帯魚用の人工餌で問題なく飼育できます。
冷凍アカムシを時折与えるのもよいでしょう。
やや神経質なので、餌を投入してもなかなか食いつかないことがあります。
(混泳)
金魚の分類法にあてはめるなら、いわゆる「長物」と呼ばれる泳ぎの速いタイプです。
らんちゅうやオランダシシガシラなど動きのゆったりした
「丸物」と混泳させると、餌取りで差が出てしまいます。
同サイズ、同タイプの魚で揃えましょう。
鉄魚飼育のまとめ
個体によって差もありますが、金魚に比べ警戒心が強く、なかなか飼育者に慣れません。
そこがまた人の手を加えられずに姿形を保ってきた、鉄魚ならではの神秘さを感じさせてくれます。