ブルドッググーディッド(Allophorus robustus)を知っている人はあまりいないでしょう。
メキシコ北西部に分布する、カダヤシ目グーデア科に属する、いわゆる真胎生メダカの一種です。
真胎生メダカはグッピーのような胎生メダカと同様に卵ではなく、子供を産みます。
私が本種の存在を知ったのはアクアライフ1993年9月号でした。
その時は解説のみで写真は掲載されておりませんでしたが、
「でかくて醜いグーディッド」との記載が妙に印象に残っていました。
その後、同じくアクアライフ2002年11月号に写真が発表されました。
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多分、唯一の邦文による飼育紹介(笑)
その姿はメダカとは程遠く、同じ真胎生メダカの中でもかなり異質な感じでした。
つまり、頭が大きく、下顎が突出し、体高が高く、側扁しており、
一見ブラックバスことオオクチバスなどの
スズキ目魚類を思わせるようないかにも肉食魚といった感じの魚でした。
醜いグーディッドとは思えず、世界一かっこいいメダカと私は思いました。
何とか手に入らないかと思ったものでしたが、当時の説明では商業ルートでの入荷はなく、
愛好家による導入が望まれるとありました。
写真の個体は東山動物園のメダカ館提供の個体だったようで、
その後、メダカ館に何回か通い、
バックヤードも見せていただく機会もありましたが、本種は見かけませんでした。
2014年より飼育開始
そんな物欲も忘れかけていた2014年の冬、
何気なく見ていた熱帯魚通販サイトで本種が売られていることを知り、
本当にブルドッググーディッドなのかと何回もそのサイトに書かれていた学名と写真を見比べながら、
飼ってもすぐ死んでしまうのではないか、と恐る恐る購入、現在に至ります。
結果的にはすべて杞憂で順調に飼育できています。
送られてきたのは5㎝くらいのペアで、赤虫とその通販業者オリジナルの配合をやっていました。
水槽の大きさは45㎝でした。25℃くらいに加温していると、
順調に大きくなり、3か月くらいで繁殖行動である交接をオスがし始め、
4か月後には初出産となりました。
ただ、生まれた子供はすべて死亡しており、二回目も同じように全滅していました。
オスが殺したのかと思い、3回目はメスのみを別水槽に移して出産させたところ、
ほぼ全個体が生きたままで水槽の陰に隠れてめでたく成功となりました。
水温も水質も気にすることなし
まず、高温にも強いこと。グーデア科の魚は夏場の暑さが壁となります。
多くの種は水槽用の冷却ファンをする程度でよいのですが、
水温を下げてやらなければなりません。
ブルドッググーディッドはこの気遣いは不要で水温30℃くらい続いても全く問題ありませんでした。
冬は無加温で飼えますので、ヒーターやファンは全く不要で、
日本産の淡水魚と同様な飼育方法でOKです。
水質に気を使う必要もありません。
エサは赤虫と配合を与えていますが、
大型の個体にはメダカやエビを生きたままをやるとよいと思います。
成長するとメスは15㎝位、オスでも12㎝位になり、
とても大型の個体を1ペアで飼育する場合は60㎝水槽が必要になります。
ブルドッググーディドの繁殖
オスは繁殖期になると黒ずんできて、メスを追い掛け回します。
うまく交接していれば妊娠期間は1か月程度、その際に十分にエサをやりましょう。
見る間にメスの腹が膨らんできます。
一回の産仔数は若い小型のメスであれば30尾程度、
大きな個体では100尾程度も産みます。先述したようにオスは産まれた子供を殺しますので、
出産間際のメスは別水槽で単独飼育をしてください。
繁殖は晩春から夏が多いような気がしています。
その他
グーデア科の特徴なのかもしれませんが、
雌雄問わず個体間で小競り合いはします。
ただ、殺しあったり、致命傷を負わせるようなことはありませんので、ほっておいても大丈夫です。
メダカとしては比較的長生きではないかと思います。
初めに買ったオスは2年くらい、メスは3年たった今も生きています。
ただ、繁殖ができるのは生後2年くらいまでではないかと思います。
繁殖に適した年齢は生後1年から1.5年くらいでしょう。
最後に
2014年から2015年にかけて、
比較的よく売られていたのですが、それ以降また見なくなりました。
あまり魅力が認識されないうちに終わったような気がしますが、
怪魚マニアも納得の格好よさ、丈夫で、繁殖もしやすいということなしの魚です。
飼育の機会に恵まれたらぜひ系統維持に参加してみてください。