「生きた化石・カブト○○」‐。
さて、○○の中に入るのは「カニ」? それとも「エビ」?
実はどちらも正解なのです。
カブトガニも、カブトガニも、ともに数億年前からほとんど姿を変えていない
「生きた化石」と形容される生物。
頭部が兜(かぶと)のような殻に覆われていること、
長い尻尾とたくさんの足を持つところもよく似ています。
思わず混同しそうになりますが、両者はすみかもサイズもまるで違います。
カブトガニとカブトガニの違いをチェックしていきましょう。
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エビなのにエビじゃない?
日本では「カブトエビ」と呼ばれていますが、英語では「タッドボール・シュリンプ」。
「オタマジャクシエビ」という意味です。
洋の東西でエビという名前が共通していますが、実はエビの仲間ではなく、
ミジンコに近い、より原始的な甲殻類です。
クモやサソリの仲間に近いカブトガニとは大きく異なる点です。
サイズもまったく違います。
80cmに達する個体もいるカブトガニに対し、カブトガニはせいぜい5cmくらいまでしか成長しません。
成熟して産卵を始めるようになるまで15年もかかるカブトガニに対し、カブトエビはとても短命。
寿命は50日間ほどです。
はかない命のカブトエビですが、卵はとても丈夫。
水中で産みつけられるのに乾燥にとても強く、
10年間空気中にさらした後で孵化した例さえあります。
こうした特性はカブトエビの生息域に合わせたものです。
カブトエビは本来、乾燥地帯の生き物。
雨季になって水たまりができるといっせいに孵化し、
水たまりが干上がる頃にはもう卵を残して死んでしまっているのです。
河口域から浅い海を住みかとするカブトガニとの大きな違いがお分かりいただけたでしょうか。
カブトエビはどこで見つかる?
カブトエビはかつて、田んぼに行けば当たり前のようにいる生き物として知られていました。
土中の微生物を食べるため、泥を掘り替えす習性のあるカブトエビは、
人間に代わって田んぼを耕してくれる存在として喜ばれていました。
しかし戦後、農薬の普及によってカブトエビは激減してしまったのです。
農薬は収穫量アップという大きなメリットを持つ一方、
カブトエビやドジョウ、ゲンゴロウやタガメといった水生昆虫など、
田んぼの生き物に致命的なダメージを与えてしまうのです。
昔ながらの水耕栽培に代わり、
田んぼに水を張らない陸稲の普及もカブトエビの住かを奪うことになりました。
それでもカブトエビが絶滅してしまったわけではありません。
農薬と化成肥料に頼りきりだった時代を経て、
現代では再び自然の力を生かした有機農法が見直されてきています。
アイガモやカブトエビの力を借りて稲作を試みる農家も少しずつ増えてきました。
カブトエビの姿を見るなら、やっぱり田んぼが一番なのです。
近くに田んぼがないという方には、通販のカブトエビ飼育キットがおすすめです。
カブトエビはまだまだ謎がいっぱい
では、有機農法を行っている田んぼに行けば必ずカブトエビに出会えるのでしょうか?
そうはならないのがカブトエビの不思議なところ。
同じ有機農法の水田でも、ある田んぼにはカブトエビが群れをなすように泳ぎ回っているのに対し、
隣り合った田んぼではまったく姿をみかけない…なんてことがしばしばあります。
田んぼ同士は水路でつながっていますし、土も栽培法も同じ。
なぜ、カブトエビの生息に差が生じるのでしょう。
実はまだ詳しい理由は分かっていません。
ちなみに飼育の際はベアタンクより、田んぼの土を敷いた方がより長生きさせることができます。
適切に給餌、換水していても、ベアタンクはなぜかカブトエビ飼育にあまり向かないのです。
どうやら秘密は田んぼの土にありそうですね。
良く知られた存在でありながら、まだまだ謎の多いカブトエビ。
解き明かすのは、皆さんの役目かもしれませんよ。
(写真引用元:カブトエビ wikipedia)
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