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ノコギリザメの生態が神秘的!海水と淡水を行き来できる深海生物

2016年10月10日

ノコギリザメ wiki

 

ノコギリザメは、学名をPristiophorus japonicusといい、

北海道以南の日本の海、そして朝鮮半島からシナ海と、

東アジアの広い範囲にかけて分布します。

体は細長く、体長は170cmほど。泳ぐよりも、

海底での生活に適したように腹面は平たんになっています。

鼻の穴は腹部の下面に開いており、弁があります。

なんといっても特徴的なのが口の上部に位置する長い吻で、

これは上から押しつぶされたように平べったく、

非常に長く、両側にのこぎり状の突起が一列に並びます。

そののこぎり状の吻の中央部腹側から、

一対のひげがはえています。このひげの有無と、エラが体の横にある(ノコギリザメ)のか、

それとも腹側にある(ノコギリエイ)のかの違いで、

ノコギリザメとノコギリエイの区別がつきます。

 

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深海のサメは住処に融通が利くために広く分布できる

ノコギリザメ3 wiki

 

比較的浅い水深にすむサメというのは、暖かい水温をこのむということでもあるので、

深度を深めるごとに水温の低くなる深海域で暮らすことはできません。

それに対して、水温の低い深海のサメは、

表層域近くでも水温の低い極付近の海であれば、

何も深海にかぎらず表層域にまで上がってこられるし、

低緯度の暖かい海であってもきわめて深い領域まで潜れば、

低い水温となっているので、表層がたとえ暖かくても、

潜ればある程度移動できるということです。

このことから、深海域のサメは、よりグローバルでコスモポリタン的、

無国籍的といえるのです。

私がかつてバードウォッチングに出かけた際、ベテランの愛好家の方が、

渡り鳥の無国籍性に対し、

高い空には人間の決めた境界などないと語っていたのが印象に残っていますが、

海の深さによってもこのグローバルさがもたらされることは興味深いですね。

 

 

海水と淡水を行き来できる不思議

ノコギリザメ4 wiki

 

ノコギリザメは臭みがなく、非常においしい魚だといわれています。

これは肉に尿素が少ないため、ほかのサメの多くのようにアンモニア臭がしないからでしょう。

サメは尿素の働きによって体液の浸透圧を海水とほぼ同等にし、

脱水を防ぐという工夫をしていますが、

ノコギリザメは汽水域や淡水域に入ることもあるため、

それほど浸透圧を高める必要がなく、

かえって汽水や淡水で体が水を吸うので適さないのでしょう。

ノコギリザメは淡水と海水を行き来するために、

硬骨魚類のようにエラや腎臓で絶えず真水を体内でつくり、

尿素が少ないために常にさらされる脱水の危機から身を守っていると考えられます。

尿量も海水魚と比べて淡水魚の方がはるかに多いのです。

とはいえまだノコギリザメの浸透圧調整機能について謎は多く、

東海大の田中彰教授の著書、「深海ザメを追え」によると、

目下研究中とのことです。

 

 

複数のエサを食べる生き物にとってどのエサがより重要なのか

ノコギリザメ2 wiki

 

食餌の重要度を示す指標には、Index of Relative Importanceというものがあります。

この計算方法は、胃の内容物のうち、出現回数をFとし、

個体数をMとし、重量をWとして、(%M+%W)×%Fであらわされます。

仮に、出現回数と重量が同じでも、個体数が多いと重要度が上がる点に注目しましょう。

それだけ、小さいものを大量に食べることができているわけですから、対象の生物にとって、

食餌が楽であることが予想できるのです。我々人間に当てはめてみれば、

コメや麦のIRIは高くなることがほぼ間違いないでしょう。

雑食性の生き物が仮に珍しい肉で胃の中が満たされていても、

その個体数が 1に近いものならば、

一種の僥倖として食べることができたもの、と考えるのです。

そして、このように非常に低い頻度で一種の僥倖によって食事をするというタイプの生物は、

一般的に生命を維持するための代謝が非常に低く抑えることができており、

運動性などを犠牲にする一方、長寿であるという特徴があるのです。

 

比較的ピラミッドの低いエサを必中で狩る控えめな存在

 

ノコギリザメでは、小魚、甲殻類、イカ等のIRIが高く、

特にこれらの生き物は成長して死ぬまでのサイクルが早く、

大型の魚類やエイ、サメなどを食べるメジロザメの仲間などと比べると、

ノコギリザメは高次捕食者とは言い難く、

サメの中では控えめな存在かもしれませんね。

ノコギリザメの名前の由来にもなっている、

ノコギリ状に突起の生えた長い吻を振り回したり、

海底の砂を掘って餌を食べたりする習性ですが、これにはノコギリザメや他のサメ特有の

ロレンチーニ瓶という器官がかかわっています。

吻の中にあるこの器官は、生物が発する微弱な電気を感知して、

餌がどこにいるのかを探し当てるのです。

能ある鷹は爪を隠すといいますが、

ノコギリザメも自慢のノコギリ状の吻をやたらに振り回したり、

海底の砂をほじくり返すのではなくて、事前にロレンチーニ瓶によって餌がどこにいるか知っておいてから、

一撃必中で狩りをしているのです。

 

ノコギリザメのように個性を生かして省エネで生きよう

 

 

画一的な生産や、一度の取引きの大規模化によって、人々は経済の発展を遂げました。

しかしそれは多くの生き物を死なせ、

開発によって野生動物が住みにくい世界に変えてしまうものです。

大量生産、大量消費の経済から、サービス、機能の質、

そして個人の好みの追求といった付加価値を高めていき、

洗練していく方向性が、これからの人類が目指すべきところでしょう。

このノコギリザメも、海底の小動物をわずかに食べ、あまり活発に泳ぐことをせずに、

鋭利な吻とロレンチーニ器官のレーダーという高度な技術を身につけたようにです。

モノの価値は大きさや規模のみで決まらず、

芸術的な効率性や、独自に培われた個性にあるのです。

付加価値といえば、そういえばサメをフカともいいますね。

写真引用元:wikipedia ノコギリザメ

 

ノコギリザメの動画

 

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