ショップでよく見かけるけれど、意外と育てるのが難しい魚。
エンツユイにはそんなイメージが付きまとっています。
真上に背びれが突き出すような独特の体形と白黒のゼブラ柄を幼魚を見て、
ついつい衝動的にお迎えしてしまうのですが、成魚まで育て上げるのは難度が高いようです。
今回はそんなエンツユイの育て方を考えてみましょう。
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エンツユイの基本情報
中国・長江を中心に棲息するコイ科の魚。
幼魚のうちはゼブラ柄で、エンゼルフィッシュのように体高があります。
成長するにつれ白黒の柄は徐々に薄れ、赤褐色へ体色が変化していきます。
成魚はのくすんだオリーブグリーンに赤褐色のストライプが入ります。
縞模様の向きも色も変わってしまうのです。
体形もコイのように細長くスマートになります。
最大1mになりますが、飼育下ではそこまで成長しません。
エンツユイの飼育情報
ショップでは5~10cm程度の幼魚がよく出回っています。
体形や柄の面白さから人気を集めていますが、
成魚になるまでの間に落としてしまうことが少なくないようです。
温帯域である中国原産の魚であることをふまえて、
水槽サイズ、水温、餌など様々なポイントを考えていきましょう。
エンツユイの水槽
5~10cm程度の幼魚なら45cm水槽で飼い始められますが、
最終的には50cmを超えるので、最低でも120cm水槽の設置を念頭に入れます。
エンツユイの成長は遅いとされていますが、
狭すぎる環境がストレスになる可能性はあります。
エンツユイの水質
中国では湖から大河にまで分布しているので、
水質への柔軟性はあると考えられます。
中性付近をキープしていれば大丈夫でしょう。
熱帯魚のように25度以上の水温は必要ありません。
夏を乗り切れなかった例が多く報告されているので、
水槽用クーラーを用いるなどして高水温を防ぎましょう。
低温への耐性は高く、10度程度まで下がっても平気です。
硬度は未知の部分です。
原産地である長江や洞庭湖の硬度は分かりませんが、
エンツユイが琵琶湖に帰化していることはヒントになりそうです。
琵琶湖は平均的に軟水で、石灰岩質の北部だけは中硬水です。
この点から考えて、アフリカン・シクリッドのように硬水を用意する必要はなさそうです。
エンツユイの底砂
幼魚期、成魚期どちらも、口はプレコのように下向き。
水底の泥をさぐったり、石の表面についた苔をなめとるのに適した口なのです。
食性を考えれば、底砂を敷いた方が落ち着くでしょう。
口を傷めないよう、田砂など粒の小さいものを敷き、定期的にクリーニングします。
エンツユイの餌
エンツユイ飼育で最も高いハードルとなるのが餌です。
ショップでは冷凍アカムシを与えることが多いようです。
導入当初は冷凍アカムシや人工飼料を問題なく食べてくれますが、
次第にどんどん痩せていき落ちてしまうケースが目立ちます。
考えられる理由は2つ。
まず、本来は泥の中の微生物などをあさって食べる「ベントス食」であること。
冷凍アカムシ中心では栄養が偏り、拒食→餓死という流れになるのでしょう。
ちなみにコリドラスもベントス食ですが、
肉食嗜好が強いため、アカムシ中心でも飼育できます。
プレコタブレットを砕いたものや、底棲魚用の粒状飼料、スピルリナ、
さらにゆでたホウレン草など植物性の餌を中心に、
できるだけバラエティに富ませるようにしましょう。
もうひとつの可能性は、十分な餌が摂れていないことです。
エンツユイは温和な性質なので、ついいろんな魚と混泳させてしまいがち。
他魚に餌を食べ尽くされてしまい、
水底付近にいるエンツユイまで餌が回っていないかもしれません。
コリドラスやクラウンローチなど底棲魚との混泳は避け、
餌やりのタイミングを変えるなどしてエンツユイが摂餌できるようにしましょう。
ベントス食の魚は常に口を砂の中に突っ込んで、モグモグと餌を探しています。
なるべくこまめに給餌するのもコツでしょう。
温和なので幼魚期なら混泳相手を選ばない点はメリットですが、
長期飼育を目指すならエンツユイだけの水槽を用意したいところです。
エンツユイ飼育のまとめ
可愛らしい幼魚期から姿を大きく変え、大きくあるエンツユイですが、
せっかくなら長い付き合いにしたいもの。
個人レベルではまだ長期飼育の難しい魚なので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。