はじめての深海

幻の深海生物ユウレイイカの生態に迫る!全身イルミネーションの深海魚

この記事の所要時間: 323

イカ焼き f

 

夏真っ盛り。夏まつりでは屋台の食べ物も楽しみですよね。

焼きトウモロコシや焼きそばとともに、外せないのがイカ焼きでしょう。

でもイカは、食べるだけが能ではないんですよ。深海には、神秘的な魅力を持ったいかがいるのです。

その一つが今回ご紹介するユウレイイカ

学名は、Chiroteuthis pictetiです。

 

はじめてのアクアリウム:全記事一覧はこちら

はじめての深海:全記事一覧はこちら

 

幽霊のようなブヨブヨの体

ユウレイイカ 引用

(写真引用元:上越タウンジャーナル

 

ユウレイイカの特徴は、大きく分けて次の二つ。

一つは ユウレイの名前の由来になったとおぼしき、

実態があるのかないのかわからないような、クラゲのように存在感のない肉質。

一般的なイカのシコシコとした弾力性のある食感は、コラーゲンによる強固な組織によるものですが、

ユウレイイカの例外的なブヨブヨとした寒天状の体は、 この組織が極めて疎だと思われます。

 

強力な筋肉を放棄した、異端的なイカ

イカ f

 

 

イカの胴体の肉は、縦には裂けないが、横には引き裂くことができるのは、

イカを召上ったことがある皆さんにはおなじみでしょう。

これはイカの外套膜(胴体)の筋肉の構造によるものです。

人間の骨格筋のような横紋筋とよばれる筋肉は、

縦方向に束になったものですので、貝柱のようにほぐれるものですが、

イカの筋肉は斜紋筋とよばれる構造をしており、

これが足の方からヒレの方向に向けてらせん状に分布しているため、

横方向に割くことができるのです。

多くのイカは、この斜紋筋の強固な収縮によって、漏斗とよばれる排出口の器官から、

水を勢いよく排出してひじょうに高速でおよぐことができます。

しかしユウレイイカは、前述したように筋肉の発達していないブヨブヨした体が特徴ですので、

生存戦略として、活発な活動は選択しなかったということがいえそうです。

 

ブヨブヨだから潰れない?

クマナマコ wiki

 

海底にすむクマナマコなども、ほとんど水でできたぶよぶよした体をもち、

仮に彼らを陸に揚げると形を保ってはいられないそうです。

このような生き物たちが、われわれ人間が潜ったら水圧でつぶれるような

深海に対応した一つの姿であるということはとてもおもしろいと思います。

 

ユウレイイカの全身に輝くイルミネーション

ホタルイカ f

 

次に、ユウレイイカの特徴として挙げられるのは、

イカの中でもホタルイカとともにとくに発達した発光器です。

目のふちにそって3列に並んでいるほか、第4腕には55個、触腕には40個、

さらには内臓の墨汁嚢の上に、一対の真珠のような発行器が付いています。

主に外套部に発行器が集中したホタルイカと比較して、

ユウレイイカはまさに全身にイルミネーションを備えているような

 

派手さがあると言えるでしょう。

さらに、ホタルイカが 5cmほどの体の大きさであるのに対して、

ユウレイイカは外套長が20cmほど、

そして広げると40cm以上になるという発達した腕を持ちますので、その姿は壮観です。

 

ユウレイイカが任意に体を光らせられる仕組み

科学 f

 

ユウレイイカの発光する仕組みは、ルシフェリン-ルシフェラーゼ発光とよばれます。

ルシフェリンは、酸化することで、発光する作用のある有機化合物です。

そして、ルシフェラーゼはルシフェリンの酸化を触媒(手助け)する酵素です。

そのため、ルシフェリンそのものが、発光生物の体の中にあってもそれだけでは発光せず、

ルシフェラーゼと組み合わさった時に、初めて酸化のスイッチが入り、生物の任意のタイミングで

体を光らせることができるというわけです。

これに対して、発光するバクテリアを体内に寄生させることで

体を光らせる生き物の多くは、任意に光らせることはできず、基本的に光らせっぱなしです。

 

発光後は蛍光体へと変わるユウレイイカのルシフェリン

分子 f

 

ユウレイイカのルシフェリンは、セレンテラジンという分子です。

発光というのは、エネルギーを使って実際に光子を放出する働きですが、

蛍光は外部からの光に駆動されて、人の可視光線の波長の光を発する働きです。

ユウレイイカのセレンテラジン-ルシフェラーゼ発光は、これら二つをうまく組み合わせています。

セレンテラジンとルシフェラーゼによって光が放出された後は、

セレンテラジンはセレンテラミドという物質に変わり、

こちらが蛍光して、青白い光を発します。

 

海中の明るさと自身の光を同調させてカモフラージュ

水質 f

 

ユウレイイカがなぜ光るのかという理由で有力な説は、海中に差し込む光によって、

ユウレイイカの姿が影となり、その影を認知した外敵が、

彼らを狙って食べに来ることを防ぐためだといわれています。

面白いことに、イカをとるイカ釣り漁船も、この光と影をうまく活用しています。

薄暗い環境が好きなイカがいるところに光を照射することで、影となった船の下を目がけて、

イカが集まってくるところに、漁をするというわけです。

 

ゆったりとしたリズムと不思議な発光は深海生物の魅力

海中をゆらゆらと漂い、全身に発光器を備えて、神秘的な姿を見せてくれるユウレイイカ。

深海にいる面白い生物の中の一つだと思います。

深海には狩りをする生物もいるけれども、死肉を食べて生きるオンデンザメのような生き物や、

海底からわき出る硫化水素をエネルギーにして生きる生き物もいます。

競争から調和へ。

人類が転換期を迎えようとしつつある中で、

ゆったりとしたリズムでいきる深海魚、深海生物は、ことさらに魅力的に見えるのではないでしょうか。

 

はじめての深海:全記事一覧はこちら

 

よく読まれている記事

深海ヘルメット

 

よく読まれている記事:まだ見ぬ怪魚を求めて、人類が深海探検に初めて行った日

 

アクアリスト 感性を磨く

 

よく読まれている記事:フウセンウナギは深海のアナコンダ、まるでエイリアンのような形をしている。フウセンウナギの生態について調べてみた

 

梅雨

 

よく読まれている記事:神秘的な怪魚、頭が透明な深海魚デメニギスの生態と近年の研究報告を紹介(動画あり)

ラビィ・ソー

ラビィ・ソー

投稿者の記事一覧

自己紹介:
工事されていない自然の水辺に、小魚や亀が生息している様子を見るとほっこりします。
お魚さんなどの生き物のほか、廃墟も好き。

好きな熱帯魚:ハリヨ

関連記事

  1. 熱水300℃を超える熱水噴出域に生息するゴエモンコシオリエビ
  2. 究極の愛の形、雄の壮大な人生と呆気無い最期、オニアンコウの一種を…
  3. まだ見ぬ怪魚を求めて、人類が深海探検に初めて行った日
  4. 素手で触ると溶けてしまうサケビクニンの生態に迫る【動画アリ】
  5. 神秘的な怪魚、頭が透明な深海魚デメニギスの生態と近年の研究報告を…
  6. ラブカをもっと知ろう!深海の生きた化石でもある古代サメの魅力
  7. ノコギリザメの生態が神秘的!海水と淡水を行き来できる深海生物
  8. フウセンウナギは深海のアナコンダ、まるでエイリアンのような形をし…

ピックアップ記事

おすすめ記事

  1. サルビニアククラータを屋外で越冬させる方法
  2. ベタの飼育にぴったりのサルビニアククラータを育てよう
  3. レッドビーシュリンプを色鮮やかに育てるには?
  4. レッドビーシュリンプの抱卵の舞とは?
  5. レッドビーシュリンプの脱皮の前兆と周期
  6. レッドビーシュリンプの大好物、赤虫と餌やりの頻度

ピックアップ記事

おすすめ記事

どうするべき?水槽に現れる貝(スネール)・水ミミズ・プラナリア・ヒドラの対処方法

アクアリウムをやっていると、水槽内に、導入した覚えのないものがひょっこり…

ボトルアクアリウム初心者におすすめの水草5選

ボトルアクアリウムの主役といっても過言ではないほどに重要な水草ですが、…

グッピーや熱帯魚飼育 – 天然餌の重要性を分かりやすく解説

前回に引き続き、今回もグッピーなど他の熱帯魚にも重要な食事(餌やり)につ…

エビ玉の餌がスゴイ?エビ玉シュリンプフードの秘密

シラクラ エビ玉シュリンプフード 30g(小) ビーシュリンプ エサ 餌 関東当日便&nbsp…

レッドビーシュリンプが暴れたら疑うべき原因は?

突然レッドビーシュリンプが水槽の中で暴れだしたらとてもびっくりする上に心…

【絶対押えておくべき】横浜のおすすめ熱帯魚(アクア)ショップ4選!

今回は横浜市にある熱帯魚ショップについてのご紹介です。横浜市には多く…

おすすめ記事

  1. グッピーや熱帯魚飼育 – 人工餌・天然餌などエサの違いを徹底解説
  2. 【レッドビーシュリンプの水作り】最適な水質とは?
  3. 淡水魚の臭い対策!これぞアクアリウムの香り、なんて喜んでいられない
  4. 【飼育】注目度バツグン! プリステラで群泳を楽しむ
  5. 深海に住むちょっと不思議なシンカイアシボソヤドカリの生態
  6. 熱帯魚の冬対策をしよう!ヒーターやサーモスタットの選び方
PAGE TOP