今回から新シリーズ「はじめての深海魚」の紹介になります。今回は紹介する神秘的な怪魚、「デメニギス」は既に1939年に発見されていました。しかし半世紀に渡り謎とされていた不思議な怪魚の関する研究報告を2009年、カリフォルニア州のモントレー湾水族館・研究所によって公開されました。
近年まで謎だったその生態を今回紹介したいと思う。
この記事の目次
透明な頭をもつ深海魚デメニギスの生態・データ
(写真引用元:MBARI news)
デメニギス(英名:Barreleye, 学名:Macropinna microstoma)
ニギス目デメニギス科に属する魚類の一種であり、
望遠鏡のように筒状に突き出した両眼が特徴的な深海魚です。
半世紀前の深海魚デメニギスの考え方について
この魚の特徴は頭上部がスケルトン状に透けていて、その内部にドーム状の緑色の目を持っています。写真で見たら、最初はどの部分が目なのか?と思いますがこの矢印の部分、緑色の球体が目なんです。
これまで海洋生物学者の間では、その目は優れた集光能力を備えているとわかっておりましたが、固定された上方しか見ることが出来ないと考えられました。
近年の調査により固定された目が・・・ごにょごにょ
近年モントレー湾水族館・研究所(MBARI)の研究員ブールス・ロビンソンとキム・ライザンビッラーの調査により、新たにデメニギスの目のカラクリの研究結果を報告しました。
実はその目は透明な膜に沿って回転することが判明されたのです。となると、獲物を探して上方から前方までの広い視角を持つというのが判明しましました。
従来は太陽光の弱まる中心層に生息し、高感度の目で海中に漂う獲物をとらえますが、その固定された目の視界は限られていると思われてきました。モントレー沖の海底で無人操作器(ROV)を使用してビデオ撮影を行い、そこでじっと静止しているデメニギスを発見したのがきっかけです。
デメニギスを発見した際の水深
(写真引用元:MBARI news)
デメニギスを発見した際の水深は600m - 800mでした。このデメニギスの体長は約14cm - 15cmです。体の色は黒いですが、頭部はグラデーション状の透明な皮膜で覆われており内部は液体で満たされていました。
特にドーム状の2つの目は非常に特徴的で、光を反射し鮮やかな緑色に輝いています。非常に神秘的ですね。これまでにもデメニギスは捕獲されていたのですが、頭部が液体を満たした皮膜のゼリー状に覆われており捕獲されても、引き上げた際は頭部などが傷つき破損しており、原型が留めていなかったので詳しい生態がわからなかったのです。そして実際に生きている姿が観察されたのが、つい最近の2004年のことです。
ROVカメラでとらえた映像では眼球が上下に回転しているところが確認できます(動画あり)
映像では鮮やかな緑色の眼球が上下に回転しているとことを確認出来ます
デメニギスが水中での静止状態するには
下腹の大きなヒレでバランスをとって静止状態を保っていました。そして胴の脇の小さな胸びれを小刻みに動かして方向転換など俊敏な動作を取ります。
上記の動画の最後辺りでもその俊敏な動きが確認できます。危険を察した際のデメニギスは驚くほど素早い動きをしてますね。
深海でマイペースに漂っているデメニギスを想像していましたが、ここまで素早く泳ぐとは予想していませんでした。
デメニギスを生け捕り捕獲に成功
この時に研究員が幸運にも生きたデメニギスを捕獲することに成功しました。しかも船上で数時間生きていたので、研究者たちはその場で自然体に近いこの魚の生態を観察することが出来たのです。その場に居合わせた研究者たちも興奮したと予想出来ますね。
捕獲したデメニギスの胃を確認したところ、ある生物を食べていた
この時に捕獲した2匹のデメニギスの胃からクラゲの断片が検出されたと報告があります。深海を漂う小さなクラゲなどを飲み込んでおり、消化器官も飲み込むのに適している内臓構成をしているとのことです。しかしデメニギスは海洋生物学者の間でも困惑させ好奇心を募ってきましたが、まだまだこの生物の研究が必要と報告されています。
それにしても深海にはこんな神秘的な怪魚がいるなんてワクワクしますね。年々、調査する際の技術も向上しているので新種の深海魚、また既に発表されている深海魚の新たな面も見られるかもしれないですね。
過去記事:まだ見ぬ怪魚を求めて、人類が深海探検に初めて行った日